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2024年11月23日土曜日

20241123-26_南アルプス深南部千頭森林鉄道跡-合地山

20241123-26_南アルプス深南部 千頭森林鉄道跡-合地山 

記録:河本(1、2日目) 、落合(3、4日目)
天気:晴れ (1-3日目)、曇り(4日目)
メンバー:沼田(3、L)、河本(2)、落合(1、食糧) 

予定
一日目:寸又峡温泉-(寸又川右岸林道)-千頭堰堤-(日向林道)-寸又橋-(千頭森林鉄道跡)-大根沢出会
二日目:大根沢出会-(千頭森林鉄道跡)-釜ノ島小屋-(寸又川左岸林道)-柴沢小屋
三日目:柴沢小屋-合地山-諸沢山
四日目:諸沢山-日向林道合流点-千頭堰堤-(右岸林道)-寸又峡温泉 

行動結果
day 1: 0520 寸又峡温泉- 0730 千頭ダム-(寸又川右岸林道)-千頭堰堤-(日向林道)-0920 寸又橋-(千頭森林鉄道跡)-1630 小根沢停留所
day 2: 0600 小根沢停留所-(千頭森林鉄道跡)-1700 釜ノ島小屋
day 3: 0610 釜ノ島小屋-0900 柴沢-1255 合地山-1600 1541ピーク
day 4: 0600 1541ピーク-0700 諸沢山-0920 日向林道合流点-1120 千頭堰堤-(右岸林道)-1200 寸又峡温泉


この山行はは去年同時期に行われた山行のリベンジとして計画されたものであり、廃道ライターのヨッキれんさんがホームページ「山さ行かねが」に上げている山行記録を参考に、この地の林業資源を運び出すために建設された千頭森林鉄道の軌道跡の最深部を訪ねる計画だ。事前調査が足りなかった前回の反省を生かして事前調査をより詳細に行った。ほぼ唯一と言って良い山行記録であるヨッキれんさんの記事を読み込み、軌道跡や左岸林道、日向林道が載っている旧版地図を国土地理院の九段下の事務所に赴いて取得し、さらに予備日を含めて5日の日程を空けて置いた。また崩落地通過のためにロープやアックス、渡渉用のサンダルも用意した。こうした工夫が功を奏したのか軌道跡を最後まで歩き通すことができ、トラス橋やトンネルといった様々な林業遺構を見ることができて嬉しい。


11/23
記録:河本
天気:晴れ
大間集落(寸又峡温泉)に到着してすぐに準備を済ませてヘッドライトをつけて出発し、ここもかつては軌道跡であった舗装された右岸林道を2時間半ほど歩くと千頭堰堤に着く。千頭堰堤の上を左岸に渡ってすぐのところにある登山道を30分ほど上がり日向林道へ出て、しばらく日向林道沿いに寸又川によって削られた急峻な谷の斜面を横切るように川の上流方向へ進む。日向林道は去年と相変わらずで歩きやすいところも多いが、上から土砂が流れてきたであろう崩落地が多数存在し、土砂が林道の寸又川側の端まで到達しているところでは、林道端は川に向かって切れ落ちているため滑落すると数百m下の河原まで放り出されると思われ、ミスが許されない。崩落地のトラバースは今回の山行で最もよく出てくる危険箇所だが、土砂や石の斜面は安息角を越える斜面にはならないので、角度も高々45度であり足元が崩れて多少滑っても足を突っ張れば止まることも多いが、崩落地のすぐ下が切れ落ちているところはそうは行かず滑落したら即お星様になってしまうので怖い。この林道も崩れていないところでは車がすれ違えるほどの道幅があり、急峻な山の中で旧千頭林営署が相当予算をかけて作ったと思われるが、見るも無残な状態になっているのを見ると自然の復元力の凄まじさを感じる。前回使った左岸林道へつながるであろう登山道の梯子を見送り、寸又橋を少し超えたところにある吊橋へつながる細い踏み跡の分岐で吊橋方面に進み板が腐りかけている吊橋を渡ると目的の千頭森林鉄道の軌道跡に出る。軌道跡は単線の線路が敷けるくらいの道幅で作られたと思われ、寸又川が削ったV字谷の斜面を横切るように走っている。崩れていないところは歩きやすいが、半分以上の道のりは崩れており崩落斜面のトラバースや崩落によりできた岩場の登攀などが混じる。道中には石垣やトラス橋、トンネルや林業や鉄道駅などとして使われたであろう木造の廃屋などの林業遺構がたくさんあり薄暗く険しい道程ではあるが楽しい。コンクリートの平均台を渡るところやトラス橋などといったいくつかのポイントを越えると大樽沢停車場に着く。2階建ての木造小屋でギリギリ泊まれそうである。その先の橋が落ちてレールだけが残るポイントではロープを出して右壁を高巻きし、前回未踏のエリアへ入る。一箇所ヨッキれんさんの記録にはないであろう新しい崩落地があったが懸垂下降を使って通過した。蔓性の木本が密に絡みついた高い鉄橋を渡るところは足を引っ掛けて転ばないか非常に怖かった。その後橋が落ちているであろう箇所で懸垂下降と残置ロープを使っての登り返しをし、小根沢停車場に着くと日没間近だったのでここで泊まることにした。使えれば廃屋に泊るつもりで来たのだが崩壊がひどいため近くにテントを張った。

11/24
記録:河本
天気:晴れ
小根沢停車場を少し探索してから前進を開始した。小根沢から上流のすぐに崩落地があり斜面が急で締まっており危険と判断したのと、その先も通行困難な箇所が予想されたため一度懸垂下降で河原に降りて軌道跡へ復帰できるところまで河原を歩いた。このとき渡渉の必要があったためサンダルに履き替えて、ズボンを脱いで渡渉した。深さは膝上くらいだったが、水は非常に冷たくもうこれ以上渡渉はしたくないと思えた。河原から見た崩れかけの軌道跡は壮観である。聳え立つ崖の斜面を切り崩し、険しく無常感が漂う千頭の山という魔界の中で一定の秩序を築き保守しようとした人類の努力と、それを尽く無に帰してしまう自然の動的平衡を保つ作用のせめぎ合いを生々しく感じられる。もちろん自然の大勝利であり、崩落し放題の暗い谷底には悲壮感が漂う。崩落地を越えるとガレた斜面を伝って軌道跡に復帰する。その後大根沢合流点までは支流の沢にかかる小さい橋が落ちている箇所が続き多少苦戦したが、大根沢から栃沢までは旧地図に軌道跡沿いに登山道が書かれてあり、鹿の踏み跡があり歩きやすい。栃沢から先は牛馬道の区間であり、レールが敷かれていたかどうかはわからないが、短いレールが落ちている箇所が散見された。はじめは歩きやすい区間が続き、人里離れた山奥にいきなり檜の植林地が現れたり、車両の行き違いのための複線区間のような箇所が見られた。しばらく進むと崩落地や木造橋が落ちた所を越える必要のある箇所が釜ノ島小屋まで頻繁に続く区間に入り、かなりペースが落ち、疲れも出てくる。このあたりからは斜面すぐ上方に林鉄廃線後に山奥へのアクセス手段の代替として建設された寸又川左岸林道が走っており、建設時に生じた土砂が軌道跡に落ちてきていて、崩落地が非常に多い。そんな中日没時刻が近づき、幕営適地を探しながら進むも寸又川はゴルジュになっており、軌道跡は崩落し放題の急斜面にあり、軌道跡を探すのも難しくどうしようかと焦りながら進んでいるうちになんとかGPSによると釜ノ島小屋のすぐ近くであろう所まで着くが、どうやっても通過できそうにない崩落地に出くわし、右側の岩を見るとなんとトンネルのような穴がある。入ってみると途中で閉塞しているがこれは記録にはなかったものである。見つけられて嬉しい。トンネルから出ると急いで道を戻り、崖をよじ登って左岸林道へ出て、真っ暗になるギリギリに無事釜ノ島小屋へ到着する。近くの沢で水を汲み、ここでもテントで宿泊した。釜ノ島で廃線跡らしい区間は終わりである。


11/25
記録:落合 
天気:晴れ 
前日に釜の島に着いた時にはもう暗くなっていたのでこの日の朝に釜の島の廃屋を見にいく。いくつかある建物のうちいくつかは壁や天井が無くなっていたが、そうでないものは扉が開いていて中には動物のフンがたくさんあった。部屋は畳だが、何にせよ動物のフンだらけなので使いたくはならない。


千頭林鉄跡は釜の島から数百メートル手前でトンネルが崩落していて、そのトンネルの出口も見つからなかった(出口も左岸林道工事の影響で埋もれている可能性がある)が、釜の島で千頭林鉄と左岸林道が合流するので釜の島から柴沢までは左岸林道跡を辿る。釜の島からしばらくは左に見下ろす寸又川がゴルジュになっており凄まじい。直ぐに人が通れる代物ではない大崩落地が現れるので高巻いて懸垂下降で復帰する。高巻くと反対側の林道に降りるために設置されたと思われる黄色ロープが垂れ下がっていたが念の為それより奥から懸垂下降した。
高巻きしたところ
ここからは時々鹿の踏み跡付き崩落地の簡単なトラバースがあるが、基本的には前日までとうってかわり広い道幅いっぱいに苔で覆われた左岸林道跡を爽快に歩く。河本さんが言う「左岸林道は人間が滅んだ10年後の世界のようだ」は非常に的を得ている気がする。
左岸林道のトラバースは落ちても水ポチャするだけなので怖くない
左岸林道の苔

柴沢小屋手前で光岳に繋がる吊り橋が現れる。この橋はズタズタボロボロで、主塔手前の床木を踏んだら...抜けた。こんな吊り橋は渡ってみたくなるもので、河本さんが先陣をきって絶対に落ちなさそうなワイヤーにセルフをかけながら渡った。続いて落合も渡り、「ビビリ散らかしてるじゃないですか」と言ったら河本さんも床が抜けないか心配だったという。光岳への登山道も使う人がいないので好き勝手に荒れていた。ここから光岳に行くのは面白そうなのでいつか行きたい。
写真だとボロさが伝わらないですね

少し進んで柴沢小屋に着く。ここのトイレも誰も使わないので見た目と臭いのギャップが世界一だ。無臭のボットントイレに臭いをつける度胸はないので外でしたくなりますよね。小屋も中は綺麗で、3人くらいは寝られそう。
柴沢小屋外


柴沢小屋の少し先には千頭山に続く吊橋があり、こちらもなかなかだった。
柴沢でフル充水してからは汗をぶちまきながら小屋の目の前の斜面を登って尾根に出る。尾根に出てちょっと行った所で沼田さんがカモシカを見つけたが逃げてしまい私は見られなかった。合地山に続く尾根は登るにつれて倒木が増えてくる。山頂付近だけ薄ら雪があった。その後、途中から落合が先頭だったが彼の読図がポンコツで進むのに時間がかかり目的地の諸沢山遥か手前の適地にテントを張ることになってしまった。誠に申し訳ないのでそろそろ本気出します。

11/26
記録:落合 
天気:曇り
夜中に雨が降っていて、雨で濡れた日向林道のトラバースを考えると怖くてよく眠れなかったが朝には止んでいたのでよかった。尾根が細くなっている場所もあったが、暗いうちから行動する。諸沢山に登ってからはしばらく読図の練習をしながら降りて日向林道に出る。林道に出る直前が急勾配になっていた。
もうすぐ日向林道
日向林道の崩落地トラバースは千頭林鉄や左岸林道のそれと違って落ちたらバイバイなので行き同様ずっと気が抜けなかったが、行きよりも怖さを感じなくなっていた。千頭ダムまで降りてきてようやく人の気配を感じる。この山域の登山者は珍しいようで千頭ダムでは作業員の方に話しかけられたりした。
ここでお気づきいただけただろうか。行きで2時間半かかった寸又峡-千頭ダム間の林道が帰りは30分で済んだ。というのも千頭ダムから5分ほど歩いたところでダムで話した超優しい静岡の天使に車で寸又峡温泉の駐車場まで送ってもらったからだ。臭い我々を車に乗せてくださり大変恐縮です。
我々を寸又峡温泉まで乗せてくださったおじさんですら輝かしき頃の千頭林鉄を知らないとのことだったので、その忘れ去られようとしている有様を思うと情に訴えかけてくるものがあった。
そして2010年のヨッキれんさんの調査がなければもっと時間がかかっていたし、なにより今回の山行は実現されなかった。ヨッキれんさんにも感謝しかないです。
記録を書いているといつも思うのだが、必要最小限の情報をサクッと記した簡潔なものが良いのか、ちまちまと冗長な記録が良いのかどちらなのだろうか。読む分には前者がありがたいのだが書いているとつい長くなってしまう。こんなに長い記録にお付き合いくださりありがとうございます。

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