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2015年4月18日土曜日

2015.04.18 越沢バットレス

記録:白石薫平

メンバー
伏見修一、白石薫平(CL)

2015年4月20日
晴れ
鳩ノ巣駅8:45--9:30岩場下の東屋10:00--10:20右ルート11:55--12:30岩場下の東屋13:00--13:10第二スラブルート15:00--15:30岩場下の東屋15:40--16:20鳩ノ巣駅

この山行は、マルチピッチの新人訓練の実施場所選考を念頭に、越沢バットレスという有用な岩場の難易度を見極めようという目的意識の下、企画された。比較的本チャンに近い場所であるため、山行審査の段階では心配する声も聞かれたが、コンディションが悪ければ潔く中止するということで承認された。実施にあたっては、久々のマルチピッチの感覚を取り戻すことと、岩場で素早く行動して夏山合宿での本チャンに備えるということも目的に加えられた。

鳩ノ巣駅で関係先に連絡を入れ、ハイカーの姿がちらほらと見える駅前を後にした。途中の林道は2014年11月時点より伸展しており、終点近くには3台ほどの駐車スペースまで出来ていた。岩場下の東屋に到着した時点で2パーティーの先客がいた。最終的に、この日は我々も含めて5パーティーほどの姿が見えた。

まず右ルートを登ることにした。1ピッチ目は正規のルートではなく、右ルート下降点の真下から登り始めた。取付きで先行パーティーを20分ほど待ち、登り始めた。1ピッチ目は白石がリードした。先行パーティーが登っていた天狗の踊り場に直上するルートは、良さそうなボルトが並んでいたので、ここを登った。案外手強く、スリングを掴みながら登った。立木に支点を作って、伏見をビレイした。2ピッチ目は白石がリードした。右の滑り台の直下まで、右上気味に登った。このピッチはルート中で最も簡単だった。3ピッチ目は白石がリードした。このピッチの右の滑り台が右ルートの核心だが、細かいスタンスを拾いながらフリーで登った。右の滑り台のプロテクションは、一つのハンガーボルトを除いて全てピトンである。前回はここで落ちてしまった伏見も、フォローで落ち着いて登った。登った後は、お宮のハングの場所を伏見と確認し、右ルート終了点から懸垂下降した。伏見がトップで降りた。下降後、東屋に戻って昼食とした。

昼食後は第二スラブルートを登ることにした。1ピッチ目は伏見がリードした。濡れた凹角を登り、立木の少し上まで登った。見た目には簡単そうだが、凹角右のスタンスに踏み込めないと手強そうだった。2ピッチ目は伏見がリードした。簡単なクライミングの後、スラブを少々登った。途中には鳥の巣があった。3ピッチ目は白石がリードした。このルートの核心部であるスラブを25mほど登るピッチだ。スラブの細かいスタンスや左壁のカチなどを使いながらフリーで登った。プロテクションは、スラブの真ん中にハンガーボルトが埋め込まれておりそれを使ったが、左壁のリスに打ち込まれた気休めのようなピトンも使った。伏見はスラブ右端のカンテなども使いながら登ったそうだ。4ピッチ目は伏見がリードした。II級程度のクライミングの後、踏み跡を尾根上の登山道まで登った。達成感のあるルートで、登り切った後には握手を交わした。下降は右ルート終了点まで歩き、そこから懸垂下降をした。白石がトップで降りた。

東屋に戻って荷物をまとめ、来た道を駅まで戻った。

越沢バットレスについて所感を述べておこう。右ルートについては、1ピッチ目で天狗の踊り場に回り込むルートを採り、右の滑り台で落ち着いて登れば、手頃なルートである。岩登りが得意な部員ならば、2年生の後半になり、フォローで登った経験を積めば、リードも可能だろう。フォローで登るだけならば、夏山合宿を経験した1年生が行くことも十分に可能だろう。一方、第二スラブルートについては話が違うことが分かった。核心のスラブは、ジムで登れることはもちろんとして、精神的な強さも要求されるピッチであった。ゆえに、1年生や2年生には行きづらいルートだと言えるだろう。この2ルート以外は、書籍(北山真編(2009)『フリークライミング日本100岩場 2 関東 増補改訂版』山と渓谷社)に記載されていたグレードが両者のIV+級より高いので、より難しいと推定する。以上を総合すると、越沢バットレスは上級生の本チャン慣れという目的では最適な岩場であるが、下級生が主体的に行うトレーニングには向かない岩場であると結論付けられるだろう。本チャンの緊張感を味わうという意味では、上級生は下級生を積極的に連れ出すと良いと感じた。

当初の目標は「マルチピッチで安全に素早く行動する」であった。安全面は達成できたが、迅速さはもっと追求できたと感じる。久々のマルチピッチで、支点に到着してからの動作が緩慢だった。また、右ルート1ピッチ目をフリーで越えられなかったことは痛恨事である。クライミング能力自体の向上も重要だが、登りやすそうなルートを見出す「岩を見る目」も養うべきであろう。