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2023年3月5日日曜日

南アルプス主稜線縦走



現役1名とOB2名で南ア主稜線の縦走
に行ってきました。

メンバー:近江(OB), 縄(OB), 尾高(2年)


2/20 19:05沼平ゲート〜20:20ヤレヤレ峠幕営
2/21 6:30ヤレヤレ峠〜9:20横窪沢小屋〜13:40茶臼小屋泊
2/22 6:20茶臼小屋〜6:45茶臼岳〜9:15上河内岳分岐〜12:30(?)聖平小屋泊
2/23 停滞
2/24 4:30聖平小屋〜8:20聖岳〜14:40兎岳避難小屋付近幕営
2/25 5:40(?)兎岳避難小屋付近〜6:10兎岳〜13:30百間洞山の家泊
2/26 5:30百間洞山の家〜8:50赤石岳〜10:35大聖寺平〜14:40荒川中岳〜14:50荒川中岳避難小屋泊
2/27 6:15荒川中岳避難小屋〜12:20高山裏避難小屋泊
2/28 4:10高山裏避難小屋〜11:30小河内岳〜14:50三伏峠幕営
3/1 5:50三伏峠〜10:25塩見小屋〜13:20塩見岳〜16:00(?)北荒川岳手前2701付近幕営
3/2 13:00(?)北荒川岳手前2701付近〜17:40安倍荒倉岳直下幕営
3/3 7:00安倍荒倉岳直下〜10:50三峰岳〜15:00三峰岳下り2572付近幕営
3/4 6:00三峰岳下り2572付近〜9:00横川岳〜12:30伊那荒倉岳〜13:30苳の平幕営
3/5 4:50苳の平〜9:00仙丈ヶ岳〜15:20柏木登山口
2/20 1日目

移動日。千頭まで大井川鉄道、千頭から沼平までタクシーで向かった。千頭から1万3000円程だったので、静岡駅からタクシーに乗るよりはお財布に優しい。千頭駅発17時ごろまでしか対応していないらしい。

19時ごろ沼平ゲートに降り立つ。これから16日間の縦走が始まると思うと、胸が高まる。畑薙大吊橋までの林道はわずか5日前の冬合宿でも歩いた林道。新月で真っ暗な中、適当に歩いて行くと程なくして畑薙大吊橋である。この日はヤレヤレ峠まで上がる事として大吊橋を渡る。暗闇の中35kg程のガッシャーを背負って吊橋を渡るのは中々楽しい。やや悪いトラバース道をこなすとヤレヤレ峠に到着。なかなかの幕営適地。

沼平ゲート出発時

2/21 2日目

横窪沢小屋への下りが凍結していて、若干悪かったが、それ以外は特に問題なく順調に進んでいった。雪もよく締まっており、ラッセルも特に無かった。ただ、茶臼小屋へのトラバース道は若干分かりづらい箇所があった。

この日はピカピカの茶臼小屋で宿泊。とても快適だった。


快適な茶臼小屋

2/22 3日目

朝イチで茶臼まで空荷で往復。深南部から上河内、聖、中央アルプスがよく見渡せる。天気良すぎか。稜線上は高温で解けた雪が固まったのか、雪というよりは氷になっている箇所が多かった。上河内だけへの登りは完全に凍結しており、怖かった為途中で引き返した。

南岳からの下りで一度下降する尾根を間違えたが10分ほどで気づいた。その後は踏み抜きと格闘しつつ樹林帯を下り聖平小屋へ。予想していたよりもハードな日だった。

茶臼山頂
c


上河内岳と聖岳


2/23 4日目

強風予報のため停滞。




2/24 5日目

最初は樹林帯。前日登っていた単独行の方のトレースをお借りする。前聖の手前から樹林を抜ける、と同時に雪面がガチガチに凍結している箇所が多くなる。前聖から見る聖岳は凄まじい迫力で聳え立っている。傾斜はかなり強そうだし、雪面もほぼ氷の様である事は確実。ほんとに登れんのかよ。マジでラスボス感MAXであった。とはいえ、よく観察すると山肌に夏道の痕跡が見える。それが上手く、砂利等の露出している面を避けて山頂まで繋がっている様であったので、基本的に夏道を辿って登る事とする。

案の定、ガチガチに凍結し、半分氷の様なっている雪面にしっかりアイゼンを蹴り込んで効かせながら登っていく。足を滑らせたら最後、数百m下まで氷の滑り台である。慎重に登っていけば問題無いとはいえ、まだまだ縦走前半、ガッシャーの重さも30kgは超えている。心身共に消耗する登りであった。登っている間、これマジでヒマラヤって言ってもバレないんじゃね?とか思った。

圧倒的迫力の聖岳

前聖と聖岳
およそ300m程、そうした雪面をこなすとようやく聖岳山頂。数日前の冬合宿でも来た場所であるので、そこまで感慨は無い。というか、聖からの下降もかなりシビアそうであったので、感慨に浸る余裕は無かった。強いて言うなら、仙丈遠いなぁぐらい。

聖岳山頂にて

聖の北側斜面は思っていたよりは凍結しておらず、少しだけ安心。とはいえ、2950m付近?からの斜面はかなり急で数十mのクライムダウンを強いられた。2796ピークあたりから夏道はトラバースしており、トラバース道を辿ればロープを使わずに下降できるそうだが、我々はトラバース道を発見できず、稜線沿いに下降する事とした。2750m付近の細いリッジ上で、北側に伸びるルンゼ状の地形に沿って、5p懸垂した。木がある程度あり、支点が取りやすそうだったので懸垂をしたが、50mロープ1本しか無かったので下降に時間がかかった。上部はスタカットでも良かったかもしれない。この辺りから予報通り雪が降り始め、風も強まりルンゼ内はスノーシャワーや雪塊が絶え間なく落ちてきた。支点は雪面に露出した木の枝みたいなもので何とか。

クライムダウン

その先は細いリッジを細かいアップダウンを繰り返しながら進んでいく。兎の登りは一箇所めちゃくちゃ左側が切れ落ちていて怖い岩があった。半分四つん這いになって通過した。後は、木とかを頑張って掴んで雪壁を登っていく奮闘的な感じ。特にロープは出さなかった。

そうした登りをこなし、ヘトヘトになりようやく兎山頂下の平地へ。事前情報により、兎岳の避難小屋が雪で埋まっていて使用できない事は知っていたのだが、想像以上に埋まっていて笑ってしまった。掘り出すのも難しそう。問題はどこで幕営するかであるが、山頂下の平地は基本的に風がかなり強い。設営出来ないことは無いが、あまり快適では無いだろう。他に適地が無いか、探してみたが、平坦かつ風が弱い場所というのは皆無であり、結局避難小屋手前の平地で幕営する事とした。ガッシャーをまずテント内にぶち込み、飛ばされない様にして設営。案の定、かなり寒かったが、夜にかけて風は弱まったので絶望的では無かった。とはいえ、夜中何度も起きたけれども。この日は迷いなくペミカンデー、マジで世界一美味かった。(今回予定全行程16日の内、6日分ペミカン、炒めた肉と野菜をバターで固めたもの、を持って行った。)

長い1日だった。縦走全行程を見てもこの日が1番ハードだった気がする。


2/25 6日目

この日は打って変わって快晴。イマイチ回復したのかよくわからない体で兎岳の山頂に立つ。ここから下降していくのだが、北側の急斜面は全てガチガチに凍っている。結局朝イチで標高差150m程の急斜面をほぼ全てクライムダウンで下降していく。一歩足を滑らせれば数百m下の奈落まで真っ逆さまである。結局この斜面の下降だけで1時間以上かかった。そこから先、小兎、中盛丸山、大沢岳の登下降もそれぞれ100〜200m程の標高差があり、極端に悪いところは無いものの、凍結した斜面の下降、踏み抜き等が連続しかなり体力を持ってかれた。結局この日は赤石岳避難小屋まで行く予定だったが、到底到達できなさそうだったので百間洞山の家へ。極めて快適な冬季小屋だったが、小屋内で湯を作り湯気が立つ度に、火災警報器が作動し大音量のブザーが鳴り響くのには閉口した。


2/26 7日目

前日の遅れを取り戻すべく、気合を入れて赤石岳へ。百間平までの雪面、百間平は風がかなり強かったが、雪面の状態は極めて良好で、スムーズに進んでいく。かなり寒く感じたが、この日は赤石山頂付近では-20℃程度まで気温が下がった様だ。


そんなこんなで快適に百間平を通過、赤石岳への登りに差し掛かる。県境のリッジ上はかなり岩が露出しており、難しそう。雪面の状態も良く締まっていて安定している様だったので夏道沿いにトラバース後、ルンゼを登っていくことに。慎重にアイゼンを効かせ、トラバースをこなしていくと、ルンゼへ。赤石岳の名の由来となった、赤いチャートが朝日に染まる様は日本離れしていた。ドロミテっぽい。行った事ないけど。素早くルンゼを通過し山頂へ。空が青い。というか黒くて宇宙を感じる。空を飛ぶ飛行機も随分近く感じた。赤石の山頂からは360°の大パノラマ。人生で1番の絶景だった気がする。その後、小赤石を経てスムーズに下降していく。小赤石の肩?(3030mピーク)からの下りもクライムダウンはほとんどせずに下降できた。結果、大聖寺平に着いたのはまだ10時半!中岳避難小屋までいけるんじゃね?という話になる。

赤石山頂にて

赤石山頂からはこれから歩く山が一望
大聖寺平付近、正面が荒川岳

荒川小屋上まで稜線を進んでいき、いよいよ荒川岳の登りへ。ここは夏道沿いにルンゼを登っていくか、県境沿いに稜線を登っていくルートの二択があったが、ルンゼを登っていくルートは夏道沿いのルートは夏道が分からない上、トラバースもかなり嫌らしそうだったので却下。稜線を進む事とした。岩峰右の若干窪んだボロボロの砂利の斜面を進んでいく。かなり斜面はボロボロだし、傾斜も強かったが、雪を少し被ってるお陰でそこまで崩れなかった。そうして2900m付近の平地へ。ここからは一転、傾斜が緩くなる。山頂も随分近くにある様に見えて少し油断した。

基本的に岩を避けつつリッジ上を進んでいく。一箇所、岩峰を左に巻いて、チムニー状?になった部分を登る箇所があるのだが、若干悪く、ロープは出さなかったがここが核心であった。その後は急な雪面を登っていき、前岳山頂へ。前岳山頂が見えてから、ほとんど距離は無いはずなのにやたら遠く見えた。雪山はスケール感がバグる。

前岳になんとか辿り着いた後は、中岳避難小屋へ。なんと小屋には先客の単独登山者がいた。転付峠の方から来たらしい。人が居るとは思わなかったのでびっくりであった。予定以上に進めた充実感と、小屋に置かれている布団のお陰でこの日はあまり寒さを感じる事なく熟睡できた。

2900m付近の平地より山頂方向


荒川中岳へ
ペミカンカレー♪


2/27 8日目

荒川岳からの下降は、雪面が安定しているため、朝イチで夏道沿いにルンゼを下降していく事とした。夏のコースタイムより早くルンゼを爆速下降。ルンゼを2500m付近まで下降後、とりあえずトラバースしてみるが、夏道の痕跡はピンクテープぐらいしかなく、別にただの雪面をトラバースしてるのとほとんど変わらない。結局、踏み抜きと不安定な雪面で詰んでしまったので、一回少し平らなところまで降りた後、登り返して稜線を進んでいく事とした。そこから先の細い稜線は気温がかなり上がった事もあって地獄の様な踏み抜きの連続。また、アップダウンの途中では急斜面が多く、クラストしている箇所もある為、アイゼンを使うかワカンを使うか迷う場面もかなり多かった。そんなこんなで地獄の様に時間がかかり、1時間程経っても100m程度しか進んでないという地獄の様な状況が続いた。高山裏避難小屋へ辿り着く頃には戦意を喪失し、この日は早めに行動を切り上げ、翌日雪の締まっている朝のうちに行動する事とした。

高山裏避難小屋はとても快適であり、ラジオを聴きながらマシュマロ焼きパーティをした。

印象的な日の出
下降してきたルンゼ


2/28 9日目

この日は気合を入れ、4時出発。アイゼンとワカンを併用し、雪がよく締まっていることもあり、まずまずのペースで板谷岳へ。板谷岳から大日影山の稜線は急峻な小ピークがいくつか連なっていて、核心。急な雪壁登り等をこなして大日影山手前の平地へ。ここまで来れば一安心である。大日影山から小河内岳へはまたなだらかな稜線。小河内岳の登りも至って快適である。その後も特に問題無く三伏峠へ。行動時間は11時間程度になった為、かなり疲れた。そして、なんと三伏峠の冬季小屋は開放されていない事が判明。急遽幕営へ移る。とはいえこの日のテントはとても暖かく快適であった。

大日影山への稜線
小河内岳にて


3/1 10日目

この日は本来塩見小屋までの予定だったが、樹林帯の登りが思っていたよりもかなり進み、塩見行けんじゃね?って空気に。樹林帯はやっぱり全然時間読めないですね。慌てて、塩見小屋でハーネス装着。塩見小屋は埋まっていて掘り出すのはかなり大変そう。今日泊まらなくて良かったかもしれない。

塩見の登りは雪の量が少なめだったからか、夏道のマーカーがかなり見えていて、それを辿って夏道沿いに上がった。ロープを出す事もなく、無事塩見山頂へ。塩見山頂からの下りも一箇所クライムダウンをしたが、それ以外には特に悪い箇所は無く無事2700m程度の安全圏へ。

ただ、この辺りの稜線は荒地になっており、ほぼ樹林が無い上に、クラストしていて雪が硬く幕営適地がなかなか見つからなかった。今夜はかなりの強風予報である為、しっかり風が防げるところに幕営したいのだが。結局完璧な適地は見つからず、時間もなくなってきたので、雪が若干吹き溜まってる所で幕営し、気休め程度の防風壁を作った。結局それなりに風は吹いたが、夜から朝にかけて10-20cm程度の降雪があった事もあり、特に寒さを感じる事なく寝られた。

塩見山頂直下
塩見岳にて
幕営地

3/2 11日目

午前中は雪と風の為停滞。13時ごろ出発し、熊の平小屋を目指す。しかし早速仙塩尾根の洗礼を受ける。前日からの降雪のお陰でラッセルがあった事に加え、単純に距離が長く、なかなか思うように進まない。結局安倍荒倉岳手前で時間切れとなり幕営。


3/3 12日目

三峰岳へ向かう。三峰岳の登りは山頂手前で細い岩尾根となっているが、特に問題は無く通過。雪の状態が悪ければ若干悪いかもしれない。下降は夏道は鎖場となっている場所が悪そうだったので、ハイマツを掘り起こして懸垂をした。この際、ハイマツが風の関係か横向きになっていた為、ハイマツにクレムハイストで支点を取った。

その後は適当に仙塩尾根上の2500m付近で幕営。最高の幕営適地だった。

三峰岳山頂にて


3/4 13日目

この日は軽めに苳の平まで移動、のはずだったが絶妙に夏道が分かりづらいのとラッセルのお陰で何だかんだ時間はかかった。

あんまり美味く無さそうな飯


3/5 14日目

苳の平から少し樹林帯を上がるとすぐに森林限界を超える。稜線を進んでいくとやがて大仙丈の登りへ。地形図からして明らかに急だったので少し心配していたが、夏道と同様に斜面を右上トラバースして大仙丈手前のコルへ上がればそこまで大した事はなかった。雪の状態が悪ければもっと怖かったかもしれない。尾根通しに行けない事は無さそうだが難しそう。一歩一歩稜線を進んで行くと、ついに仙丈岳へ。これまで歩いてきた真っ白な山々が一望できる。この純白の稜線をここまで80km以上歩き、自分達のトレースを刻みつけて来たと思うと胸が熱い。心の底から満たされたような気持ちになる。やり切ったー。固い拳を交わして記念撮影。

少し休憩した後、一気に地蔵尾根を下降。めちゃくちゃしっかりトレースが付いていて非常に歩きやすい。むしろ夏道よりも歩きやすいかもしれない。後はやたら長い道をひたすら歩いて柏木登山口に到着。無事に全行程を終え、その日のうちに帰京。伊那バスターミナル前の店で食べたソースカツ丼はマジで美味かった。人生で1番米が美味く感じたかもしれない。

この山行最後の日の出
仙丈へ
最後のピーク
ゴール!

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