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2020年2月23日日曜日

2020/2/23-27 南アルプス漂泊

新倉〜峰山尾根〜二軒小屋〜大井川西俣〜北俣尾根〜塩見岳〜三伏峠〜鳥倉


メンバー:L三浦(OB、M2)、近江(B3)、箱守(B3,記録)

北俣尾根は塩見岳東峰から南に直線的に伸びる尾根で、大井川西俣に落ち込んでいる。かつては登山道として利用されていたようだが、今では年に数人入るかどうかくらいのマイナールートになっている。そんな尾根に冬に行こうというのは三浦さんの発案。三浦さんにとっては3回目(?)となる挑戦に現役の我々も誘われた形となった。最初の挑戦は前河内東尾根から西俣におりる計画だったがラッセルが深く敗退、2回目は伝付峠を越えて二軒小屋から西俣林道を詰めようとしたがメンバーの怪我でエスケープしていたようだ。

2/23 

晴れ
8:15 橋
9:00 峰山尾根取付
16:00 2041m手前で幕営

前日深夜に身延駅にバスで到着し、駅近くで適当にビバーク。寒かった。朝一の奈良田温泉行きのバスで新倉までは1時間ちょっと。「ヘルシー美里」と「新倉」のバス停の間にある橋で降ろしてもらい、橋を渡った先の廃林道を20分ほど歩いた大きくカーブする場所を取り付きにした。
峰山尾根取り付き。写真右手の斜面を登る。
ここで準備していよいよ出発するが荷物が結構重く感じた。25kgくらい?はじめ、尾根の最下部はかなりの急登で細く、さらに脆くて滑りやすいので一歩一歩気が抜けない。1ピッチ目からしんどくなって疲れた。が、休憩のタイミングで三浦さんを見ると余裕そうな顔をしているので、多分現役がこういった不整地な急登に慣れていないのが大きい原因なんだろうな。2ピッチ目も傾斜は多少緩くなるがピッチ終わりにはグロッキーになっていた。
峰山尾根下部の急登
1040mくらいで左からの尾根と合流すると傾斜は一気に緩くなり、昔の仕事道が現れる。仕事道はかなり明瞭で、追っていくと1160.5mの三角点を南から巻きながら楽に進むことができた。その先、尾根が細くなってからは仕事道か獣道のような踏み跡を辿りながら疎林をサクサクと進むことができる。道中は数多くの鹿に会った。あと大量の鹿の糞。気づかぬうちにたくさん踏んでいた気がする。雪は1700mくらいから徐々に現れ、やがて軽いラッセルになる。1900mあたりから樹間が狭くなりザックが引っかかりやすいこともあって、そうなるとペースはガクンと落ちた。この日中に稜線まで行きたかったが2041m付近でタイムオーバー。適当な場所を整地して幕営。
夜はα米に各自が好きに用意したものを合わせることにしていた。近江と三浦さんはそれぞれレトルトパウチでカレーと魚を持ってきていた。自分はというと包装も剥いたフリーズドライの親子丼。余裕だね〜とか揶揄いながらも美味しそうな匂いが羨ましかったりした。


2/24 

晴れ
6:00 出発
9:00 稜線
11:30 伝付峠の少し手前
12:50 二軒小屋
16:15 西俣坑口予定地の先で幕営

2日目。明るくなるくらいで出発。稜線までは2時間くらいかと思っていたが樹間が狭く、雪も膝くらいまでの深さになり結局3時間かかった。
朝の峰山尾根。晴れてると気持ち良い
漸く稜線に出て少しは楽になるかと思ったがそんなことはなく、途中からワカンを履きながら二軒小屋分岐まで2時間以上かかった。この日は快晴で気温も高く、重い雪がしんどさを増長させていた。分岐では長めに休憩。この先電波が入らない区間が長く続くので、天気予報など必要な情報は最新のものを入手した。どうやら翌日午後〜翌々日朝が風雪になり悪そうだった。
二軒小屋分岐
そんなことがわかったところで出発して二軒小屋まで降る。この区間は新しめの登りの単独トレースが続いていた。結局伝付に直接出る道は通れたのだろうか。二軒小屋は休日ながら事務所に人はいた。建物も大きく、こんな山奥に…!と圧倒されるものだ。小屋でも特にやることはないので、休憩もそこそこに西俣に向けて歩き出す。林道を歩き始めてすぐに倒木が現れ、西俣林道が去年の台風のあとほとんど修復が進んでいないことを悟った。リニアの工事だから今の期間も修復が少しは進んでいるかと思っていたので意外だった。二軒小屋トンネルを超えて分岐を左に入り、西俣へ。発電所の横を降り最初の橋を渡ろうと思ったら流されていた。
最初の橋
林道はこんな状態に…
仕方がないので左岸をへつって適当なところで飛び石渡渉で対岸の林道に復帰。その先もこんな調子で台風の影響が強く、林道がかなりズタボロだったので流された橋も当てにせず、歩きやすそうなところを歩いて林道が残っていれば林道をできるだけ歩いて先に進んだ。道中、飛び石で渡渉できるところは飛び石で渡渉したが、飛び石では厳しいところもあり、この日は2回裸足で渡渉した。水量はせいぜい脛くらいだが、なんせ2月なので水が超冷たい。もはや痛みで感覚が麻痺する。これは黒部横断とかになるとさらにやばそう。ちなみに近江はビーサンで渡渉しようとしたが見事に脱げてなくしていた。ドンマイ。
「あっっ!ビーサンが!」
暫く進むとだだっ広い西俣の坑口予定地に着いた。多くの資材や重機、プレハブ小屋が残されており、そこに至る林道の惨状を考えるとあまりに異様な光景だった。相当ボロボロのように感じられたがリニアの工事だけあって夏には復旧しているのだろうか。ちょっと想像できない。
抉られた林道。奥が坑口予定地
坑口予定地を過ぎると林道は一段と古いものに感じられた。適当に林道跡を辿り、16時過ぎになっていたので適当なところで幕営。水が簡単に手に入るので楽だった。久しぶりに夏のように伸び伸びと過ごせ、快適な夜だった。
冬の焚き火は燃えやすく暖かい



2/25 

晴れ→曇り時々雪
5:50 出発
7:35 慣合堰堤
9:20 北俣尾根取り付き
14:20 2560mで幕営

3日目。パッキングが楽な朝だった。出発して、前日と同様に歩みを進める。廃林道は右岸にあり、我々も右岸をずっと歩くことになった。時々大きな崩落地があり、部分的に気が抜けないガレのトラバースが出てくる。暫くすると潰された西俣側起点の看板の先に立派な堰堤が現れる。
ガレのトラバース

堰堤
堰堤を左から超えた先には台地状の慣合集落跡が残っている。かつてここに集落があったなんて、改めて信じられない。小西俣を左に見て裸足で渡渉し、中俣の右岸を進む。渡渉終わりから1時間ちょっと歩いて北俣出合に到着。ここが北俣尾根の取り付きだ。中俣を裸足で渡渉し、取り付きで再び準備する。結局西俣での渡渉は7-8回(うち裸足が4回)だった。
最後の渡渉
北俣尾根は取り付きから雪がついておりアイゼンをつける。序盤はかなりの急登だが、樹木が豊富にあり、木登りの要領で気を掴みながら登ることができる。また、青のマーキングが一定間隔で見られ、自然と登りやすいところを登っているとマーキングが続いていた。
尾根下部の青とピンクのマーキング。ピンクは最近のもの?
天候はこの登りの途中から悪化してきていて、小雪とともに時折風が樹々を揺らしていた。2100mあたりを超えると尾根ははっきりとしなくなり、一面雪の斜面となるので、地図上で左側に伸びている尾根筋に合流するために左斜登高するよう心がけた。雪も深くなってきて、先頭を3人で交代しながら順調に高度を稼ぐ。2350mあたりで明瞭な尾根筋に合流し、膝ほどの雪をラッセルしながらさらに高度を上げる。予定していた2555mには14時頃につき、その地点から少し先に進んだ窪地で幕営することにした。テントを張ったのち、近江と三浦さんはトレース作り&上部偵察のため空身で森林限界の2687mまで往復し、箱守はその間水作りをしていた。この地点では電波は流石に入らなかったがラジオはよく入った。この日の夜から翌未明にかけてはやはり雪になりそう。案の定その日は20時〜5時くらいまでテントに湿雪が吹き付け、あまりよく眠れなかった。雪かきをするほどではなかったが時折テントが倒れかかってきて退けるのに叩いてやる必要があった。


2/26 

曇り時々晴れ
6:20出発
7:20 2687m
9:30 ジャンダルムと塩見岳のコル
10:10 塩見岳東峰
13:10 塩見小屋
15:30 2512mで幕営

夜半に降った雪は30〜40cm程度で、昨日つけたトレースは埋まってしまっていた。撤収もいつもより時間がかかった。少し視界が悪い中出発し、記憶を頼りにできるだけトレースを追って1時間ほどで2687mに到達。装備を整え直し、進むが再び樹林帯に入る。このちょっとした樹林帯は本山行のしんどさの極みであるかのような星三つの区間で、膝上〜腰のラッセルに加えて落とし穴がそこら中にあってハマる。30分ほどかけて漸く抜けると、青空が広がる森林限界上に出た。霧氷が美しいダケカンバ帯を抜けると美しい雪稜が続いており、アイゼンで気持ちよく登ることができた。
綺麗
気持ちの良い尾根
右が塩見ジャンダルム、奥が塩見岳東峰

目の前の斜面を一息登ると2941mのジャンダルムの肩に出て、荒々しい岩峰群が目に飛び込んでくる。振り返ると登ってきた北俣尾根と荒川岳の北面が美しい。ジャンダルムは地図の通り西側の傾斜が緩やかなので、計画通り巻きつつ塩見とのコルまで登る。直登しても楽しかったかもしれない。ここでは箱守が先頭を歩いていたが、稜線に上がるタイミングが少し早かったのでもう少し下をトラバースしてからコルに出てもよかった。コルからの登りは地図上でも急なので警戒していたが、ルーファイに気をつけて登れば難しい箇所はほとんどない(1箇所左から小さく巻いた)。ただ、北俣側が絶壁になっているので絶対に滑落は許されない。
振り返ってジャンダルムと悪沢岳
細い尾根が終わり雪面が広くなるとすぐに山頂。3人でグーパンチを交わす。思えば山を越え谷を進み2日半かけてやっと取り付きに着いた尾根から登頂したのだ。この上ない達成感と喜びに包まれた。一通り写真をとりつつ休憩。雲がかかっていて南アルプス全体を見渡すことはできなかったが十分良い景色だった。
良い天気!
下りは夏道沿いに進むが雪の状態が悪く、途中で2ピッチスタカット。スタカット中のルーファイに時間がかかり、塩見小屋までは山頂から2時間半ほどかかった。樹林帯に入ってからはピンクテープを追いつつトラバース道を進むが相変わらず膝〜腰のラッセルが続き遅々として進まない。2時間ほど進んだところでトラバースが終わり、疲れ果てていたので幕営。無事に塩見を超えることができたので夜はちょっとした宴会に。近江と三浦さんはお酒を持ってきていて山行中少しずつ飲んでいたがこの日は結構飲んでいたと思う。私はお酒が苦手なので舐める程度にもらった。ギムレットやブランデーはどちらも度数が高くピリピリした。ひとしきり盛り上がった後はよく眠ることができた。


2/27 

晴れ
6:30 出発
10:55 三伏峠
13:05 鳥倉登山口
15:15 冬季ゲート

夜は冷え込み、テントが凍りついていたので出発に時間がかかった。すっかり明るくなってから出発し、朝からラッセル。3人で先頭を交代しながらバラバラに休憩を入れ、先頭は常に誰かがラッセルしている状態にした。基本テープが付いており、付近の昔のトレースをできるだけ追いながら進んだ。途中本谷山からの下りでルーファイを間違えたがなんとか尾根に復帰できた。
塩見岳
三伏山直前で真新しいトレースに合流し、三伏峠まで行くと三伏山を往復してきたという二人組に出会った。三伏峠から先にも彼らのトレースが新しくついていたのでそのトレースを追って進んだ。トラバースの途中でいくつか沢を横切ったが、雪崩れてもおかしくなかったので間隔をあけて素早く通過した。以前に近江や三浦さんが来た時よりは雪が多かったらしく、凍結箇所もほとんどなく三伏峠から2時間ほどで登山口に降りることができた。下山記念に写真を撮って冬季ゲートまでテクテク。途中電波が入った広場からタクシーを呼んで冬季ゲートまで来てもらった。清流苑でさっぱりして高速バスで帰京。
お疲れ様でした


インターネット上に記録が溢れている中、記録のかなり少ないルートを冬に時間をかけて登る冒険的な山行ができたのは嬉しく、貴重な経験になった。もっと冬の長期山行の経験を積んでいきたい。


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