このブログを検索

2017年9月22日金曜日

2017.09.22 谷川岳主稜線縦走

谷川岳主稜線縦走
日程:9月22日
天気:曇り時々雨
メンバー:阪本(L)、畑中
記録:畑中

行動概要
起床0300 – 熊穴沢小屋発0400 – 谷川岳肩の小屋0452 – 谷川岳山頂トマの耳0500 – 万太郎山頂0718 – 仙の倉山頂0941 – 平標山頂1009 – 松出山1045 – 元橋1130

夜が極寒だったため睡眠が十分にとれたとは言い難いが、疲労が溜まっているという感覚はなかった。しかしあまりの寒さに目を覚ました時にまだ深夜0時だったのには割と絶望した。起床後ゆっくり朝食を済ませ、出発。
初めはまだ真っ暗なのでヘッドランプをつけたまま行動した。星空がかなり綺麗であった。谷川岳の山頂に着く頃まではまだ晴れていたのでこれからの縦走に多少なりとも期待を寄せていたのだが、肩の小屋を出発したあたりから雲が空を覆い出した。

万太郎山までの道中では右側に徐々に紅葉している様をみることができて阪本とこの時期に沢登りにくるのはアリだなあと語り合った。たまに細尾根で岩を登るので、気をつけなければいけない時もあった。基本的に起伏はあまり大きくはなく歩きやすい道であった。

だんだんと霧がかかってきて、ウェアが濡れ出した。仙の倉山頂に着く頃には風もかなり強くなってきた。天候のこともあり外では休憩をとることができなかったので、休憩は登山道の途中の随所にある避難小屋でとった。平標山頂への登りでは風があまりにも強く、体を風上方向に傾けないと体勢が安定しないほどであった。平標からの下りは木の階段もあり下りやすかったが、やはり風がめちゃくちゃ強い。ここまでくると逆に楽しくなってきて、阪本も畑中も謎にテンションが高まってきた。しかし標高を下げると風も弱まってきて普通の曇りになった。それまでは畑中が先頭だったが、松出山からは阪本が先頭になって走って下った。

元橋につき、荷物の整理をした。バスがくるまでかなり時間があったので、坂本の提案でヒッチハイクをすることにした。人生初だ。期待とは裏腹に何台もの車に2人の渾身の笑顔を無視される。辛い。しかししばらくして、一台の車が止まってくれた!越後湯沢まで送っていただいて、そこで温泉に入り、昼食を食べ、帰路についた。

2017年9月20日水曜日

2017.09.20-21 湯檜曾川本谷

 湯檜曽川本谷遡行1日目

メンバー:阪本(L)、池田、岸本、畑中、吉田
天気:晴れのち曇り 
記録:吉田

・行程
4:30起床
5:40出発
7:40湯檜曽川出合
14:05清水峠避難小屋

 朝起きると、野宿したせいかとても寒く感じられ、今日は沢に入らない方がいいのではないかと思ってしまった。それはみんな同じことで出発する気が起こらず、気温の上がるのを待っていた。それでも入渓点までは行こうと5:40出発。入渓して水に触れてみるとやはり冷たい。できるだけ水に浸からないようにしようと思った。しかしウナギの寝床までいくとそこで泳ぎたいと思ってしまった。ザックを胸の下に入れて泳いだが流れが強くて進めない。結局諦めて左岸から巻くことにした。岸本、畑中は泳ぎきっていた。
ウナギの寝床

この後抱帰り滝のところでは右岸から高巻きした。急な斜面での藪漕ぎだったため足元が悪く恐怖を感じた。七つ小屋沢出合を超えてしばらく行くと、2段の滝があった。ここは左岸の踏み跡を通って巻いた。藪漕ぎの下りでは笹で足元が見にくいので慎重に下りた。これを超えるといよいよ今日のハイライトである大滝だと思っていたが、実はその手前に少し難所があった。小さな釜となっていてその先の少しの高さを超えるだけなのだが手がかりを見つけにくく難しかった。巻道を探して見たが、安全なものはなかなか無いようだった。こうして大滝にたどり着いた。
大滝

1段目はロープも出さずに登ることができた。そこから右岸に上がるところで今山行で初めてロープを出した。全員登り終わると、最後だった池田がそのままトラバースしてフィックスロープを張った。このときすでに曇天となっていて翌日の天気も雨の予報だったので、沢から上がり清水峠の避難小屋で一泊することに決めた。清水峠までの道は整備されていて歩きやすかった。小屋に着くとまだ誰もいなかった。その後10人収容とされる小屋に15人で寝ることになるのだが。この周辺については少し注意が必要だ。水を汲みに行こうとした時に、山と高原地図を見て進んでいたのだが、どうしても道がわからなくなってしまう。そんなことが何度か起こった。どうやら地図には載っていない道があったり、あるいは地図に書かれている道の位置が少しずれていたりしていたようだ。

               湯檜曾川本谷遡行2日目
日程:9月21日
天気:雨のち曇り
メンバー:阪本(L)、池田、岸本、畑中、吉田
記録:畑中

行動
起床5:00 – 避難小屋出発07:35 – 谷川岳ロープウェイ駅着13:15 – 解散(阪本、畑中はそのまま縦走へ)14:50 –(バス)-  谷川岳ロープウェイ駅着15:35 – 出発15:45 – 熊穴沢避難小屋17:15 – 就寝19:00


起床後しばらくは雨風が強かったので、しばらくは待機した。その後出発し、登山道に従って下山した。道はほとんどトラバース気味で傾斜が強いところはほとんどなかった。最後の方は吉田の体調が悪く歩くのがおぼつかなくなってきたので、土合までは歩かず池田と岸本が先に下って車で谷川岳ロープウェイ駅まで迎えに来ることにした。合流した後は初日と同じところへまたお昼ご飯を食べに行き、その後に池田、岸本、吉田の三名は車で東京まで戻り、阪本と畑中は縦走へ向けて出発。水上駅からバスで谷川岳ロープウェイまで上がり、準備して出発。ロープウェイ直下の道を登る。初めはコンクリートで途中から登山道になる。その後熊穴沢避難小屋に着き、就寝。

2017年9月19日火曜日

2017.09.19 白毛門沢

白毛門沢
日程:9月19日
天気:晴れ
メンバー:阪本(L)、池田、岸本、畑中、吉田
記録:畑中

行動
土合駅8:33 – 入渓9:30 – ハナゲ滝9:45 – タラタラノセン11:30 - 大ナメ滝12:05 – 大岩12:15 – 白毛門山頂13:00 – 駐車場16:00 –(整理、夕食、移動)- 一の倉沢 19:30 – 就寝19:50


池田、岸本の二人は車、他のメンバーは電車で土合駅に集合。合流したのち沢登りの装備などを整理した。日帰りだったので装備は最小限にした。その後出発し、入渓。しばらくは緩やかで綺麗なナメ滝などが続いた。小さい淵になっているところもあり、ウォータースライダーのようなものも楽しめた。ハナゲの滝は初めに左岸の端に沿って少し登り、中腹からは滝の真ん中を登った。岩も濡れていて滑りやすかったので、前の人と距離を置き慎重に登った。
ハナゲ滝

白毛門沢と東黒沢との二股の少し登った先にある4mのトイ状滝はロープを出して左側を登った。次にタラタラノセンは左側から巻き、その直後の5mトイ状の滝は右側から巻いた。その巻道は20mナメ滝の中腹の左端に出るので、そのまま登る。
20mナメ滝

その後すぐ大岩があり(左右に道が分かれているがすぐに合流する)、あとは沢をそのまま詰めて山頂についた。山頂でしばらく休憩したのち登山道を下って元の駐車場に着いた。天気も良く、たくさん水に触れることができたので、沢登りの醍醐味を満喫できたように思う。夜ご飯は池田の車に五人乗って水上まで食べに行った。ボリューム満点かつ美味しかったので皆満足した様子だった。土合まで戻った後、次の湯檜曾川本谷に向けて一の倉沢まで歩き、そして就寝した。

2017年9月14日木曜日

2017.09.14-16 錫杖岳

  • 期間:2017年9月14日(木)--16日(土)
  • メンバー:4年阪本豪、4年白石薫平(CL)、4年三浦玲児、3年池田航、2年縄隼佑

2017年9月14日(木)

入山

記録:縄隼佑
  • コースタイム:登山道入口7:55--9:20錫杖沢出合
  • 天気:晴
平湯温泉から7時発のバスに乗り中原高原口で下車。バス内には他にもクライミングをしそうな客が多数乗っていたが、その中で降りたのはTUSACのメンバーだけだった。バス停から登山口までは比較的わかりやすい。阪本さんの早いペースに呼吸を乱しながら1時間ほどそこそこ急な斜面を登ると川に出た。ほとんど水に突っ込んでないのに濡れる。アプローチシューズが少し欲しくなった。そこからさらに30分ほど歩くとようやくテント場に着いた。途中で前衛壁がバーーンと姿を見せる。まさに岩登りのためにできた岩なのではないかというくらいの存在感。素晴らしくかっこいい。あれが3ルンゼ、あれが白壁と、教えてもらう。あんな垂壁登れるのだろうか。テント場に着くと早速テントを張り始め、10時出発に向けて準備した。

左方カンテ

記録:縄隼佑
  • メンバー:白石、縄
  • コースタイム:錫杖沢出合9:57--10:24左方カンテ取付10:40--13:50左方カンテ終了点13:57--14:36注文の多い料理店取付15:00--15:55錫杖沢出合
  • 天気:晴
白石さんとこの日の左方カンテは登攀・下降を4時間で行うことを目標に登ることになった。そのカギとなるのは私のフォローの登り・支点構築・懸垂下降のセットあたりでいかに素早くできるか、ということにかかっていると思われた。2人分の行動食や雨具などを1つのザックにまとめた。この取付までの登りも整備されているわけでもなく普通に急である。途中から白石さんに登攀具類を持ってもらった。それでもテントサイトから20〜30分で取付までこれるなんてやはり贅沢である。
左方カンテの取付に着き、準備を整える。3ピッチ目が難しいようだったのでそのピッチが白石さんリードになるように1ピッチ目は白石さんが登った。フォローなのもあるがトポのIII級の通り難しさは感じずなるべくテキパキ登る。
2ピッチ目縄リード。IV級なら十分登れて良いはずだが、それまでに登った経験のある岩場とこの錫杖で一番違うのが残置のなさ。ナチュプロだけで登るのは新鮮だがこれと思ったカムがうまくはまらなかったり脆そうだったり。結局逡巡し時間をかけながら奥にある残置を使ってしまった。リードでまだ時間を短縮できるだろう。トポでは40mの表記だが実際は20mほどだろう。
3ピッチ目はそれまでのルンゼと様子が変わって高度感があり少しかぶっている。特にトラバースのところがカムが使えないようだ。フォローなのに相当怖がりながら登った。ここをリードできるようになるまでどれくらいかかるのだろう。3回のうち2回は白石さんリードだがここまででまだ1時間しか経っていない。いい調子である。


3ピッチ目をフォローする

4ピッチ目はトポでII級の表示であり、歩いて5ピッチ目の取付に向かった。トポでの5ピッチ目が4ピッチ目となり、縄リードで登る。IV+表記だったので身構えたが恐怖感はあまりなく、ただただ狭かった。特にザックを背負ってフォローした白石さんは苦労したようだ。
5ピッチ目は白石さんリード。白石さんが自腹で購入したでかいカムが使えたようだ。気持ちいい!と叫びながらリードしている。だがフォローでも登るのは少し怖かった。よく見るとスタンスはあるのに適当に足を置いてしまうのがよくないのだろう。ここで大テラスについた。槍〜穂高、焼岳ってこれは贅沢なすごい絶景。
6ピッチ目はV+表示だが最初のチョックストーンさえ取れれば登れるだろう、と白石さんに言ってもらい実際調べたところそのようだったのでまずはやってみることにした。背中を後ろの岩で支えながら登るとなんとか上がることができ、チョックストーンを取れた!よっし!これで俺もV+のグレードがつくぞ!…と左側のフェイスに取り付くものの登っていくうちに高度感が襲う。カムは取れるのだが落ちたら本当に止まるかちょっと怖い。気づかぬうちに動作はゆっくりになり次の一手。両手ともなくはないがその後足のせるところがないしどうしたものか、いやでもこれはしょうがないのかなとか考えてるうちに時間がどんどん過ぎる。行くしかない、と行こうとしたらロープがチョックストーンのところに引っかかって下からの力を感じた。取れそうにないのでクライムダウン。ひっかかりを解いて再度登ろうとするもすでに手は限界に近くなっていた。結局登れずまたクライムダウンしてチョックストーンのすぐ近くでピッチを切る。多分40分くらいかかってしまった。
7ピッチ目は残りを白石さんがリード。止まってたところは左足をフッと持ち上げ簡単に乗り越えていった。白石さん「かっこいいとこ見た?」私「見ました」だがそれを越えたあとの若干かぶり気味になっているところの方がさらに難しかった。そもそもこのピッチは結構長い。マントル返しのところまで持つ体力が欲しい。
8ピッチ目はそんなわけでもうフォローでもヘトヘトだったので白石さんリード。すでに2時間50分。このピッチで終わりだがその後懸垂4〜5回あるのに1時間ちょっとしかない。浮いたフレークだから手とか足とかありそうなのに意外になくやっぱりここのリードも怖いな、と思いながら登った記憶。登り終わって呼吸を整えて水を含んでいる間にもう懸垂のセットをほとんど白石さんにやってもらってしまった。
懸垂開始のとき残り45分。最初は登った8ピッチ目をそのまま懸垂。この後は大テラスに行かずに注文の多い料理店を下るのが良い。白石さんに全てトップで下ってもらった。私が下り終わった時にはもうほとんど懸垂のセットが終わっている。ロープを引くのも自分はまだまだ気合が足りないようだった。間違えずに降りてロープを通して絡まらないように投げて…という作業はまだまだ練習が足りないのか速さが足りないことを痛感した。4回の懸垂で下まで着きロープの回収にも無事成功!4分残しで目標の4時間での登攀・下降に成功した!嬉しかったがほとんど白石さんにやってもらってしまった。白石さん「僕のおかげだね」私「いや、本当にそうです」それでも無駄な時間の削り方を少しは理解できたと思う。

1ルンゼ

記録:池田航
  • メンバー:阪本、三浦、池田
  • コースタイム:錫杖沢出合9:45--1ルンゼ取付10:15--トップアウト15:50---懸垂終了18:15---帰幕18:40
  • 天気:晴
錫杖沢出合で幕営し、そのまま必要な荷物のみ持ち取付点へ向かう。錫杖沢の踏み跡には途中分岐があるが、右側の踏み跡をたどり岩場の基部に出ると、そこが1ルンゼの取付であった。しっかりとした岩であるが、リスがなくまたビレイ点にはボルトもない。
1ピッチ目は阪本がリードで登る。最初の一枚岩は支点がとりにくいが、乗越した後のスラブは傾斜が落ち、ところどころ支点がカムでとれた。40mほどでピッチを区切る。支点はカムで構築(そこより10mほど上でハンガーボルト2つの支点があったので本来の終了点はそこであろう)。
2ピッチ目も阪本リード。最初カンテの左側に出るが、その1歩は露出感があり怖い。ホールドはしっかりしているのでダイナミックに超える。その後少し暗めのルンゼに入っていき奥の傾斜が緩く平地のあるところでピッチを区切る。登りだしから1時間10分ほどが経ったので小休止(この2ピッチでトポ上の3ピッチを進んだことになる)。
3ピッチ目は池田リードで、出だしはルンゼの分岐(V字状岩壁)でその左を登っていく。カンテを乗り越えたのちフェイスを登り、そこからトラバースをしてさらに左奥のカンテの途中に広がるテラスに向かう。途中のトラバースで一部岩が濡れている場所があり怖い。トポ上では4ピッチ目と5ピッチ目を登ったことになるため、距離も50m超、2ピッチ目の終了点もカムでとっておりナチュラルプロテクションも数がギリギリだった。ロープの屈曲もひどいためビレイがしんどそうだったので、次回行くときはここのピッチを繋げるべきではないだろう。終了点は残置のハーケンに新たなハーケンを打ち構築。テラス自体は広かったので快適。ここで1ルンゼを登り終わり、懸垂中のパーティーとすれ違う。
4ピッチ目からリードを三浦に交代。テラスを出ると奥にさらに小さいカンテがあり、そこを左側から登る(カンテの右から斜めに登っていくと難しい)。このピッチから上では今まで見当たらなかった残置のハーケンが目立つようになる。
5ピッチ目は大きなカンテの左側に広がるスラブを登っていき、最後大きなハングを右から回り込んで超える。ここもロープの屈曲が強くビレイしにくい。
6ピッチ目最後のピッチは最初にかぶり気味のチムニーがある。右側はガバだが、左の壁をうまく使わないと難しい。そこを乗り越えると簡単なチムニーだが、最後の草付きは足元が滑るうえ、鬱蒼としていて視界が狭いので怖い。終了点はハイマツ帯のなかにある捨て縄の山だが、場所は狭く快適とは言い難い。そのためすぐに懸垂を開始。
懸垂は全部で4ピッチ。最初は三浦が先頭で懸垂。4ピッチ目の終了点にあったしっかりとしたハンガーボルトでピッチを切る。次から3回は池田が先頭。そのまま3ピッチ目の終了点に向かって下り、もう少し行くとカンテ上にボルトの支点があったので、そこで区切る(ちょうど懸垂中に夕焼け小焼けが聞こえてきた)。すぐ上に錆びたハーケンで作られた懸垂支点もあるが3mほど下に行けば新しいものがあるので注意。そこではV字状岩壁下にあるルンゼの左上に見えるカンテの上にいることになる。次のピッチでは少しルンゼに向けて下っていき、1ピッチ目の終了点の少し上にあったボルト支点に至る。最後はそのまま取付に向かって懸垂すればよい(但し長さ60mでギリギリ)。この最終ピッチの待ち時間に阪本がBCに先に帰っていた白石・縄ペアに無線で遅くなることを連絡。
下の取付点まで到着したときは時刻が18時過ぎ。あたりも暗くなってきたのでヘッドランプを出す。何とか間に合った。しかしロープ回収中、落ちてきたロープが岩角に引っ掛かり絡まる(60mダブル・青)。いくら引っ張っても動かないうえあたりが真っ暗になり状況が確認できないため、片方のロープを放置して帰幕。翌日の朝に取りに来ることにする(結局、翌朝池田が横から振ったらとれた)。帰幕は19時前で夕飯を作って待っていてくれた白石さんと縄に感謝。

2017年9月15日(金)

見張り塔からずっと

記録:白石薫平
  • メンバー:阪本、白石
  • コースタイム:錫杖沢出合6:17--7:00取付7:19--9:45前半登攀終了--10:05中央稜10:20--11:00大洞穴11:15--14:05錫杖岳山頂14:30--15:15牧南沢コル--16:40錫杖沢出合
  • 天気:晴のち曇
5時起床、6時過ぎに出発。出合から左方カンテ取付への踏み跡を辿り、再び下りて錫杖沢の岩小屋に出てから、北沢を詰める。しあわせ未満と注文の多い料理店を右に見ながら、見張り塔からずっと(以下、見張り塔と省略する)の取付に到着。
スタートのスラブは阪本がリード。傾斜があり、朝一の身体には少々難しく感じた。2ピッチ目は北沢の右岸を簡単なクライミングで白石がリード。擂り鉢状の底に出た。ここから、濡れている水流部分を避けて左から歩けるのだろうと高を括って、阪本を先頭にロープを引き摺って歩き出したが、悪い草付となったので一旦ピッチを切った。そこから白石が濡れた部分のトラバースを行い、ブッシュでビレイ。そこから先は簡単なクライミングになり、阪本、白石の順に2ピッチ登り、中央稜上に乗った。以上の前半部分のプロテクションはカムが主体で、ビレイ点としてはピトンを打つことが多かった。
本峰フェイスがよく見える地点まで歩いて、暫し休憩。遠望すると、目指す洞穴らしきものが2つ見えた。ここでは目標は左だろうと当たりを付けた。中央稜から北側に一旦下り、踏み跡を歩いて右の洞穴下に到達。すると、事前に見ていた左の洞穴にあまりにもよく似ているので、スマホで写真を確認してしまった。正解の洞穴が左であることを確認し、基部をトラバースし、笹の海を泳いで取付に到着した。


こっちが正解

下から見上げる洞穴は威圧的で、どう登ろうか暫く思い倦ねてしまった。洞穴からは常に飛沫が滴り落ち、左壁はもちろん完全に濡れている。しかし、考えていても仕方がない。阪本が1ピッチ目をリード。一段上がって少し試行錯誤した結果、ザックを担いではリードできないと判断して荷揚げすることにした。そして、この山行のために用意したキャメロット#3、8,000円を決め、濡れた左壁を上がった。その後は快適なクラックだが、露出感があるので吠えながらテラスへと登っていった。さて、フォローの白石はザックを担いでフォローするが、長いビレイで身体は冷え、這う這うの体で上部クラックに入った。そこでもカムが奥に入っており、回収に苦労した。テラスで水を飲んで一息入れる。リードを交代。テラスからは凹角を直上し、右のフェイスに移る。フェイス部分はあまりプロテクションが取れず、スローピーなホールドを丁寧に抑えながら登った。カムと岩角で阪本を迎え、広いスラブを歩いて山頂直下へ。最後は阪本のリードで頂上を踏んだ。
頂上の西側には明瞭な踏み跡があり、最初は稜上を忠実に南下する。ピッケルの差さったピークで記念撮影をした。看板に「山登りは青春」と書いてあり、大いに頷いた。泥んこになりながら藪を漕ぎ、大声で叫びながら岩を攀じる。素晴らしき青春であるが、時折、大学4年にもなってこんな非生産的な野遊びにチンケな自己実現をぶつけている自分を省みるときがある。しかし、そのような遊びにどれだけ情熱を注ぎ込めるかが人生の価値を決める。これが、私がスキー山岳部という学舎で教わったことである。


「山登りは青春」看板と

その後、西側の樹林帯に伸びる転げるような急坂を踏み跡に沿って下降する。ガスの隙間から見覚えのある南峰が見え始めた頃、踏み跡を外れて笹藪を漕いで牧南沢を下り始めた。沢の源頭部は滑り易い岩だったので、笹藪の中に行路を求めた。我々は今年の5月、下田川内の矢筈岳で灌木漕ぎを2日間合計30時間以上経験しているが、その経験が錫杖岳で役立つとは思わなかった。一箇所、滝を下る時に残置ロープを使用し、錫杖沢出合のテントに戻った。

左方カンテ

記録:縄隼佑
  • メンバー:三浦、池田、縄
  • コースタイム:6:30出発--6:55 1ルンゼのロープ回収--7:10基部到着--7:30登攀開始--11:50左方カンテ最上部12:10--12:40前衛フェイス頂上--13:20左方カンテ最上部--16:20懸垂終了--16:50帰幕
  • 天気:晴
昨日1ルンゼで回収できなかった片方の60mロープを回収する。それほど複雑に絡まっていたわけではなく時間もかからずひっかかりを取ることができた。
1ピッチ目昨日リードしなかったがIII級と比較的簡単なので縄がリード。恐怖感はなかったがやはりフォローの時より長く感じる。まだサイズにあったカムをすぐに出せない…。
2ピッチ目池田さんがリード。順調に進みすぐにフォローも登る。
3ピッチ目三浦さんリード。唯一ルートを知っている自分の説明があまりうまくなかったようで登っている途中で何回か確かめられる。フォローでも登ったことないのにあのトラバースするのすごく怖くないですか、と後で聞くと「高度感がないところでも危険度は一緒だからねー」論理的だ。下なんか見ず目の前の岩に集中しなくては。
4ピッチ目池田さんリード。3ピッチ目終了点から2ピッチ分ロープを出すことにした。昨日は歩いたが流れが悪くなる危険がそれほどないのでこの方法も全然いいだろう。このタイミングで後続パーティーが来た。昨日はパーティーが全くいなかったがやはり人気ルートなだけある。ザックを背負ってフォローしたので昨日よりもさらに狭く感じたがなんとか登れた。
5ピッチ目縄リード。昨日少し怖かったところだがまだそれ以外に比べればリードできるだろうと感じたのでこのピッチをリードさせてもらった。昨日白石さんが大きいカムを使ったところになんとかはめることができ、進む。落ち着いて登ると大丈夫だった。
6ピッチ目三浦さんリード。チョックストーン、チンネ内のフェイスとスムーズに登って行った。フォローで登っているともう後続パーティーのリードが追いかけてくる。前がつかえる可能性だってあるのでよくできるな、と感じる。
7ピッチ目池田さんリード。浮いたフレーク、怖い、と話すものの問題なく登って行った。7ピッチ目終了時点でまだ12時になっていなかったのでもう1ピッチ登ることにした。
8ピッチ目池田さんリード。トポのIII級の表示どおりそれほど難しさは感じなかった。これを越えると開けており前衛フェイスの頂上も見えた。そして度々声は聞こえてくるものの直接確認できなかった、見張り塔を登っている阪本・白石パーティーも見えた。確かに赤い点が垂壁を上昇している。休憩した後大体の荷物をデポし念のため1本のロープを持って頂上に向けて出発した。踏み跡はついており分かりやすいがやや急な箇所も存在した。
頂上からは本峰下部の藪や烏帽子岩なども確認することができた。登りでやや急と感じた箇所は三浦さんが危険と判断し懸垂で降りることになった。支点の木は枯れかけだったがなるべく根の部分にロープを通した。懸垂があることも考えると次からは頂上は行かなくてもいいな(笑)。降りると先ほどとは別のパーティーが休憩している。注文を登ってきたらしい。
8ピッチ目の部分の懸垂だが斜度がないのでロープを振り分けながら、バックアップ懸垂で縄トップで降りることになった。振り分け自体あまりやったことがなかったのとバックアップ懸垂も久しぶりだったので戸惑ってしまった。途中の木の枝に、振り分けたロープがこれでもかというくらいに引っかかった。後で三浦さんとも話したがここは長さも分かっていたので1本のロープで懸垂すればよかったのかもしれない。なんとかたどり着いて池田さん、三浦さんも降りたが今度はまた別のパーティーが登ってきた。登っている人がいる中懸垂すると落石する可能性もあるということでフォローが登り終えるまで待機。20〜30分ほどで今度は池田さんトップで6ピッチ目終了地点まで降りてもらう。この次の懸垂の時ロープを尻から投げてしまい絡ませてしまう。縄トップで降りる。下を見ると60mロープなら届くのではないかと池田さんと三浦さんが話すので池田さんトップで可能なら一番下まで下ることになった。だが後5mほど足りなかったようだ。途中のテラスから懸垂して、とのことだったので縄が昨日白石さんと降りた場所まで懸垂する。かなり狭い箇所で、60mロープであれば枯れ木テラス(多分)まで下ってしまうのもいいのかもしれない。もう一度縄トップで降り切り、次に池田さんが途中から懸垂し事なきを得た。
3人パーティー、頂上まで行ったことや、他パーティーがいたことで時間がかかってしまったが、それを抜きにしてもロープを投げる順番を誤ったり懸垂のセットに時間がかかってしまっていたりするのが個人的な反省点である。

2017年9月16日(土)

1ルンゼ

記録:白石薫平
  • メンバー:白石、縄
  • コースタイム:錫杖沢出合6:42--7:10 1ルンゼ取付7:25--11:30 1ルンゼ終了点11:50--13:15 1ルンゼ取付13:35--14:05錫杖沢出合
  • 天気:曇のち小雨
昨日の見張り塔からずっとの疲れ、夜遅くまで話し込んでいたことなどから、起床は5時40分だった。朝飯のお茶漬けを流し込み、1ルンゼへと踏み跡を登り始めた。取付に靴をデポし、登攀開始。
1ピッチ目白石:最初はチムニーからあまり外れないようにずり上がり、左のフェイスに抜ける。ダブルクラックの走る垂壁を越える部分は時間を掛けて登り、チョンボバンドの合流する所でピッチを切る。
2ピッチ目白石:浮石が多い凹部を慎重に歩いて上がる。V字状岩壁のハングが近づいた辺りで終了。左方には広々としたバンドと立派なビレイポイントが見えたので、凹部の途中で左のボロそうな壁に上がると良いようだ。
3ピッチ目縄:ガリーを右から左に渡り、簡単なスラブから1ルンゼを外れずに登った。先のピッチと同様、左壁を上がると綺麗なビレイポイントが使える。この簡単な1ピッチをリードするのに1時間も費した。
4ピッチ目白石:この地点からだとロープの流れが悪くなること必定で、狭く心許ないアンカーなので、トラバースしてテラスのビレイポイントまで行った。濡れていたので慎重に行く。
5ピッチ目白石:テラスからカンテを左に越え、露出感のあるクラックを登る。爽快感のあるピッチである。開けたスラブの見える部分にビレイポイントがある。左には白壁とLittle Wingのギザギザクラックが見える。
6ピッチ目白石:スラブからクラックを登る。乾いていれば簡単だし、プロテクションも取れる。
7ピッチ目白石:濡れているが簡単な凹角を登ってから草付バンドを右に歩く。凹角ではキャメロット#3、#4が活躍した。
トップアウトしてから無線でテントにいる仲間に連絡し、小雨の降り始める中、下降を開始。初めての下降なので最適なピッチの切り方はよく分からなかったが、何とか5ピッチで下降した。本降りになる前に取付に戻ることができ、歩いて錫杖沢出合に戻った。


1ルンゼ下降中

下山

記録:縄隼佑
  • コースタイム:錫杖沢出合14:25--15:17登山道入口
  • 天気:雨
バスの時間を見ると30分後と1時間半後。バス停まで約1時間かかるので、後のバスに向けてゆっくり降りることになった。雨は時間が経つにつれて勢いが強くなり、1ルンゼでもう少し時間がかかっていたら…と考えるとゾッとした。ただ、渡渉の部分はまだそれほど増水しておらず問題はなかった。その後は中原高原口から平湯温泉へのバスに乗り「ひらゆの森」で汗を流す。18時発の新宿行きの高速バスは渋滞にも捕まらず予定通り22:30頃には新宿に到着した。

2017年9月8日金曜日

2017.09.08 大井川西俣から南ア縦走記録(後半縦走)

メンバー : 中山(), 中西

記録 :

911        天気 : , 夜から雨

0430起床 ─ 0622三伏峠小屋 ─ 0636三伏山 ─ 0717本谷山 ─ 0815ゴーロ ─ 0840塩見新道分岐 ─ 0900塩見小屋 ─ 0945塩見岳西峰1005 ─ 1041北俣分岐 ─ 1205北荒川岳1245 ─ 1457熊ノ平小屋 (1630設営 1930就寝)

三伏峠で山行が一区切りついてしまたので, 南アルプスの縦走が面倒くさくなっていた。エスケープする理由はいくらでもある。12日の天気予報は雨だ。縦走を行なったとしても確実に停滞する。一般道の縦走なのに沢靴・登攀具・ザイルを担いで行かなければならない。シングルウォールであるG-LIGHTテントは防水性能に不安がある。北沢峠まで長い。気持ちが切れかけていた。11日の朝になっても縦走か下山か迷っていた。塩見方面の天気は悪くなりそうだが, 下山の決め手とはならなかった。メンバーの体調も良好で食料も十分にある。とりあえず縦走に出発することにした。

2人とも以前通ったことのある道だ。塩見新道分岐の周辺は北側が開けている。甲斐駒の花崗岩の岩肌はここからでもよく目立つ。塩見小屋から45分で塩見岳西峰に着いた。山頂標には, ローマ字とハングルで読みが書かれている。「西峰」の読みは, ローマ字では「セイホー」, ハングルでは「ニシノミネ」となっている。どちらが正しいのだろうか。

北側はガスっていて視界が無かったが, 南側は悪沢岳まで望めた。ここから見える大井川は山間の奥底を流れていて川面は見えないが, 三伏沢の突き上げていく様子はよくわかる。ここで中西のスマホが壊()れた。携帯を修理する, という下山の理由ができてしまった。ここから熊ノ平まではエスケープルートの話ばかりしていた気がする。北俣分岐からはガレ場の上部をトラバースする。濃霧時はガレ場を下りて行かないよう注意が必要だ。トラバースが終わると雪投沢のコルに着く。雪投沢方面のルートは霧でよく分からなかった。ガレ場の縁沿いに1ピッチ歩くと北荒川岳に着く。山頂で40分ほどかけてラーメンを作って昼食とした。行動中に食事を作る機会が今後あれば, 風の弱い樹林帯で作りたい。この先は熊ノ平まで緩やかなアップダウンを繰り返しながら樹林帯を進む。新蛇抜山の手前にある竜尾見晴はそこだけ窓を開けたように展望が良い。天気が良ければ爽快だろう。先ほどまで晴れていた南の空から怪しい雲が迫ってきた。急いで北上する。

ほどなくして熊ノ平に着いた。小屋でぜんざい(500)を頂く。おいしい。次の山行ではあんこを持っていくことを決めた。翌12日に下山する案も出たが, 大雨の予報が出ていたので翌日は停滞とする。テントを設営する前に, テン場にあったベニヤや石を積んでテントを浮かせて浸水対策とした。それでも夜通し降った雨によってテント内に水たまりができた。空気口周辺の素材はなぜか防水ではないらしく, 数分でびしょ濡れになってしまう。出入口のメッシュからも寝ている間に水が垂れてくる。 G-LIGHTは雨が予想される山行では不適だ。冬山用として考えるべきだろう。



912        天気 : , 14時から回復

(0800起床 1830就寝)

昨晩から降り続いた雨は朝になっても止まない。腹がへったので8時ごろに起き出した。一晩でシュラフもザックもびしょ濡れだ。下山はおろかトイレに行くことさえはばかられる大雨だ。それでも とりあえずテン場代は払いに行かなければならない。12時~15時のランチタイムに合わせてテントを出る。熊ノ平小屋でうどん(800)を注文した。雨が降っているので屋外ではなく小屋の中で頂いた。隙間風1つ吹かないことに加えて, ガスストーブが焚いてあるので暖かい。ぐっしょりと濡れたテントに戻ることを考えただけで気が滅入る。雨の日は小屋泊に限る。うどんにはサービスとして ちまきが付いてきた。中華ちまきではなくて, 炊いたもち米をきなこに付けて食べるだけの ちまきだったが, これが非常に美味しかった。今までのエッセンに足りなかったのは, きなこだ。タンパク質も摂取できて一石二鳥ではないか。今までどうして気付かなかったのだろう。きなこをテントに持ち帰って茹でた餅に砂糖と一緒に付けて食べてみた。おいしい。次の山行ではきなこも持っていくことを決めた。

雨は14時ごろから漸次弱まっていった。小屋では一時的に精神力が回復したが, テントに戻るとエスケープの話をしてしまう。翌日は好天の予報なので縦走の完遂に必要なのは ずくだけだ。野呂川の増水が心配だったので白峰三山縦走はパスした。両俣小屋に下りて野呂川出合からその日のうちに下山するか, 北沢峠に下りて一泊してから次の朝最初のバスで下山するか。翌日の気分で決めることにした。とにかく野呂川出合で9時台のバスに乗るため1時半に起床することにして就寝した。



913        天気 :

0200起床 ─ 0345熊ノ平小屋 ─ 0414三国平 ─ 0502三峰岳 ─ 0649野呂川越 ─ 0718横川岳 ─ 0814高望池 ─ 0822伊那荒倉岳 ─ 0930 2677 ─ 1059大仙丈ヶ岳 ─ 1123仙丈ヶ岳1200 ─ 1249薮沢大滝ノ頭 ─ 1345北沢峠1530 =(バス)= 1555広河原1640 =(バス)= 1830甲府

1時半に起床した。夜気が凛々として身にしみる。2時にシュラフから出た。快晴で風もなくて穏やかな朝だ。野呂川出合に下りて今日中に下山するのか, 北沢峠に下りて翌日下山するのかは まだ決めていない。とりあえず野呂川越まで行ってから決めることにした。テントを撤収して三峰岳の登りに取りかかる。朝一の冷え切った身体には重労働だが, 前日停滞していたせいか不思議と足取りは軽かった。三峰岳に着いたころにはヘッデンが要らないほど明るくなっていた。

三峰岳からの下りでは, 巻きすぎたのか一般道をロストした。すぐに復帰して事なきを得た。しばらくは稜線上のハイマツ帯を露にぬれつつ進む。正面には仙丈ヶ岳が遠くに見えて, その東には甲斐駒ケ岳が黒黒と不気味にそびえている。西には雲にとざされた駒ヶ根市街を挟んで木曽山脈の全体が見渡せる。

野呂川越に向かっている途中で, 北沢峠へ下りても今日中に甲府に着くことができることに気付いた。北沢峠の最終バスは15:30だ。野呂川越から8時間以内に北沢峠に着けば間に合う。コースタイムを考えても十分可能だと判断した。北沢峠に下りることが この瞬間に決まった。

樹林帯に入ってしまうと野呂川越までの下りは展望もなくて長くて退屈だ。馬鹿尾根と呼びたくなる気持ちがよくわかる。野呂川越から横川岳までの登りは, 三峰岳からでもはっきりそれと見てわかる急登だ。横川岳まで登ってしまうと伊那荒倉岳まで特徴のないアップダウンが続く。倒木の多い樹林帯となり, 一日中降った雨によって足下はひどくぬかるんでいる。 ひらけている箇所からは仙丈ヶ岳とそこから蜿蜒と伸びる尾根が目を楽しませてくれる。伊那荒倉岳は, 山頂標があるものの展望はなく, 尾根上の1ピークに過ぎない。奥秩父を思い起こさせる特徴の無い尾根だ。この先は尾根通しに苳ノ平まで道が続いているはずだが, どこで道を間違えたのか西側を巻く鹿道に入ってしまって一般道をロストした。すぐに復帰して事なきを得る。苳ノ平は既に通り過ぎてしまったようだ。ここで中西が右手の親指を負傷した。痛そうだが何もすることはできない。一登りすると2676峰に着く。ハイマツに囲まれたピークでここからの景色が抜群だった。

正面には仙丈ヶ岳と大仙丈ヶ岳カールが見える。南アルプスの女王の名に恥じない気品と風格を備えている。仙丈ヶ岳の右肩からは摩利支天を従えた甲斐駒が白い頭をのぞかせている。皆一様に青い南アルプスの山々の中で甲斐駒だけがその荒々しい岩肌を見せている。甲斐駒の手前には早川尾根が横たわり, アサヨ峰を頂点としてゆるやかに地蔵岳のオベリスクまで連なっている。野呂川は北岳をぐるりと取り囲み, 他の山々から北岳を際立たせている。支尾根の少ない仙塩尾根に対して, 北岳だけは自由闊達に尾根を伸ばして我が物顔で土地を占有している。北岳バットレスが見えないためか本邦第二の高峰としての威厳はない。ただ白峰山脈の北端として静かにその存在感を放っている。間ノ岳・三峰岳から右に目を転じると今朝発った井川越の深い谷が見える。稜線をたどると塩見岳がその美しい山襞をむき出している。伊那方面には, 本谷山から派生する()上伊那・下伊那郡界尾根を背景にして, 地蔵尾根の支尾根である中尾根や, 黒檜山などが見える。いずれも目鼻立ちがはっきりとせず, いくらか単調な印象を受ける。

ここから仙丈ヶ岳までは, 正面に仙丈ヶ岳・右手に甲斐駒ヶ岳を常に望みながら歩くことのできる贅沢な尾根道だ。大仙丈までの急登は相当なアルバイトだが景色が良いため気分は爽快だ。午前中に仙丈ヶ岳の山頂に着いた。我々が休憩している間にも, 数十名の登山者が行き交うほどの大盛況だった。下りのコースタイムが3時間なので, 何が起きてもバスには間に合う。山頂で30分ほどゆっくりしてから下り始めた。果たして2時間弱で下ることができたのだが, ここで最終バスの一本前のバスがつい15分前に出発してしまったことを知った。次のバスまで2時間ある。山頂での休憩をちょっと短くするだけで2時間も早く甲府に帰ことを思うと悔しい。帰りのバスは満杯だったが, 芦安で我々2人だけを残して皆降りてしまった。

甲府に着いて高砂湯に行くと9月で営業終了と書いてあった。特に思い出はないが, 甲府に来るたびに通っていた銭湯なので少しさびしい。夕飯は, 添乗員さんがおすすめしてくれた「とんかつ力」で食べると決めていたが, 風呂上がりに寄ってみると営業時間外だった。20時までの営業なので次回利用するときには気を付けたい。


 (中山)